ART GALLERY EDOM アートギャラリー エドム

【Colum】エディション・ナンバーってなんだろう?

皆さまこんにちは、いつもEDOMTIMESをご覧いただきありがとうございます。

今年は平年の夏より暑い傾向のようですが、いかがお過ごしでしょうか?

マスクをしながら過ごす、日本の蒸し暑い夏は大変ですよね…。

皆様、どうか体調など崩されぬように気をつけてくださいね。

さて、今回は「エディションナンバー」や「シリアルナンバー」についてご紹介いたします。その前に、「版画」についてご紹介いたします。

版画ってなぁに?

版画は、油絵や水彩画、アクリル画と同様に「絵画」の表現方法のひとつです。

「複製」とはまったく違い、油絵や水彩画、アクリル画、版画はそれぞれ独立した絵画方式で、芸術的価値においても変わりません。

もちろん「原画」に勝るものはありませんが、油絵や水彩画、アクリル画などのように、筆やスプレーで「描く」ことに対し、版画は版を用いて紙の上に「刷る」という芸術作品です。

今日では、様々な様式で「版画」を作成していますので、版画の種類もご紹介いたします。

リトグラフ

日本語で、石版画のことです。

木版画と違い原版を彫らない版画技法で、化学反応と、油と水とが混ざらない性質を利用して、版にインクが付くところと付かないところを作る版画です。

油性のリトクレヨンや絵具で、原版に直接絵を描いた後、薬品をつかってその絵が版に定着するよう処理をして版を作ります。

もともとは、天然の石灰石を版材にした版画でしたが、現在では亜鉛版や、アルミ版などの薄い金属版が主流となりました。白黒ではない、多色リトグラフの場合は、色の数と同じだけの版が必要です。

つまり、15色使いたいと思ったら15版必要になります。何色も色が重ねられますので明るくてカラフルな作品となり、装飾性に優れ、油絵とは違った趣が楽しめるのが特徴です。

シルクスクリーン

原版に穴を開け、紙面にインクを刷り込む、「孔版」と呼ばれる版画技法です。

版上に粘性のインクを流し込み、これをゴム製のヘラ(スクィージ)で伸ばします。版を通して押し出されたインクによって、その下に置かれた紙に絵柄が刷りだされるというのがシルクスクリーンの簡単な原理です。

版画の技法は色々ありますが、唯一、下地が反転せずにそのままの形で刷り上がる技法です。セリグラフと同義語です。

エッチング

日本語で銅版画のことです。普通銅版にニス状にしたアスファルト、ロウなどを薄くひいた面に、針状の用具で絵を描いた後、硝酸に浸して腐食させ凹凸をつくり、凹部にインクを盛って刷り上げます。

ジクレー

最新のコンピューター技術を駆使し、高画質印刷による版画です。

キャンバスの布や版画用紙に、インクをダイレクトに吹き付けられることで、原画により近く版画にできます。

ジクレー専用のインクジェットプリンタからは耐光性に優れた高性能の顔料インクが噴射されます。これは驚くほど微細なインクの粒子で、使用する機械にもよりますが、粒子の直径は最小で約15ミクロン。人間の赤血球ぐらいの大きさとのことです。

毎秒約4百万以上のミクロ粒子が噴きつけられて、実に7万色以上もの微細な色彩表現が可能とされます。

ジクレの語源である「giclee」はフランス語でインクのふきつけを意味しています。

版画についてご紹介させていただきました。ここからは今回の本題である「エディションナンバー」についてです。

エディション(限定部数)

サインは、版画作品においてその作品のオリジナル性を保証するために、作者が完成後に署名するものです。

エディションは作者が定める限定部数のことをいい、その限定部数を保証するために作者が完成した作品の余白部分にエディション・ナンバーを記入します。これをサインドアンドナンバード(signed and numbered)と呼びます。

19世紀以前までの版画作品では、署名や限定部数を記入するという習慣はありませんでしたが、19世紀末の欧州において刷り師が余分に印刷し販売することを防ぐ目的と、作家自身が制作したという証明を求められることが多くなったことから、サインを記入する習慣が浸透していきました。

その後、この習慣は広く一般化し、日本でも1920年代の版画作品でサインが記入されたものを見ることができます。

エディション・ナンバー(シリアルナンバー)

1960年にはウィーン・第3回国際造形芸術会議において「オリジナル版画と認められるためには、署名だけではなく、限定部数と一連番号が付けられなければならない」と宣言されたことによって、サインの他にエディション・ナンバーが記されることとなり、その後の版画の商業的流通の過程の中で現在の形式が確立したと考えられています。

エディションは分子/分母の形式で記入し、分母に印刷した限定部数、分子にその限定部数のうち何番目の作品かを記します。分子に記す番号は印刷した順番とは異なっても構いませんが、すべての作品の印刷の状態・質などが同じ条件であることが必要です。

E.AやH.Cってどういう意味?

また、限定部数ではなく、Artist’s Proof(A.P.)やState Proofなどと表記されたものがありますが、これらは限定部数以外に印刷されたものを示し、それぞれに意味があります。

Artist’s Proof(A.P.)は作者保有用を意味し、限定部数の10%程度までを限度としています。State Proofは試刷りの段階刷り用で、最初の試刷りは、1st state(英)1ere état(仏)、次は2nd state(英)2e état(仏)のように表示します。

E.A = エプルーブアルティスト(epreuve dartiste・仏)保存版A.P = アーティストプルーフ( artists proof・英)作家用H.C = オル・コメルス(hors commerce)版元用(非売品の意味)P.P = プリンターズ・プルーフ( printer’s proof )刷元用

今回は一般的な「版画」についてご紹介いたしましたが、まだまだ奥の深い絵画の世界を、次回の「絵画についての豆知識」でご紹介いたします。お楽しみに♪


そして、おうち時間が長くなっている昨今ですが、空いてる壁に「絵」をかけて、素敵なおうち時間をお過ごしになられることを計画なさってる方が多くなっているようです。少しでもこの記事がお役に立てたら嬉しいです。


それではまた「EDOM TIMES」でお会いしましょう!